この本は民衆の活躍にスポットを当てて1848年のウィーン革命のことを書いたものです。しかし、その民衆というのはひとつじゃありません。たとえばウィーンを囲む壁の中に住む「市民」とその外で貧困生活を送る「プロレタリア」では、ひとことに民衆といってもずいぶん立場が違うので。そして立場が違えば利害も別々。しかも、みんながみんな革命の目的をマトモに理解しているとも限りません。その結果、プロレタリアと皇室が部分的に利害一致という奇妙なことまで発生。プロレタリアは王宮そっちのけで資本家の工場の焼き討ちに精を出し、市民はプロレタリア退治に忙しくて革命どころではないというグチャグチャの事態に陥っていきました。まさにこの本のタイトルにあるとおり「乱痴気」という状態ですね。1848年はヨーロッパ中で革命が流行した年なのですが、たぶん内容ではウィーンのがいちばんトホホだったんじゃないかと思います。
そうそう、ウィーン革命ではメッテルニヒが国外に逃げていきましたけど、これでいちばん喜んでいたのが民衆ではなくハプスブルク家の主流派だったというところもギャグっぽいです。皇室はドサクサに紛れてうまく厄介払いができましたね。おまけにこのときゾフィー大公女は前皇帝を廃位して自分の息子のフランツ・ヨーゼフを帝位に据えることにも成功。革命は迷惑どころか感謝感激といったところだったんじゃないでしょうか?この本、トホホ史好きにはなかなかいいかも知れません。
なお、この本には1848年の民衆の生活のことも詳しく書いてあります。しかもそこに書いてあるのは生活の悲惨さではなく、なんだかんだいってたくましく生きてゆく人々の姿です。当時は貧困率が今の比じゃないほど高い時代でしたが、それでもこれだけしたたかに生きられるというのを読むと、今の時代ならもっと前向きに生きていけそうと思えてきます。
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