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オーストリア散策書棚 > No.28
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Sprachlehre der Wiener Mundart
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Sprachlehre der Wiener Mundart


出版元 Oesterreichsche
Budesverlag
初版 1984年(?)
著者 Mauriz Schuster,
Hans Schikola
体裁 12.8cm×21.3cm
ページ数 208ページ


主な目次

■はじめに − p.6
■能書き − p.15
■方言表記法の概要 − p.27
■母音の発音 − p.28
■子音の発音 − p.71
■文法事項 − p.101
名詞の性、標準語とウィーン弁で性の異なる名詞、名詞の語形変化、冠詞、方言における名詞、形容詞の変化、人称代名詞、 数詞、動詞、副詞、前置詞、接続詞、感嘆詞
■単語の形成 − p.162
■ウィーン弁における外来語 − p.166
■文章に関する知識 − p.177
■イントネーションに関する知識 − p.186
■あとがき − p.188
■母音発音法一覧表 − p.193
■参考文献 − p.196
■この本で使った方言単語一覧 − p.197



ひとこと


今回は非常にマニアックな1冊のご紹介です。この本のタイトルを日本語にすると、「ウィーン方言講座」となります。こんなのを勉強してウィーン弁丸出しのドイツ語を覚えたら、現地ではさぞかし変人扱いされることでしょうね。    

さて、この本は元々オーストリア人向けに出版されたもので、序文に続く能書きには「ドイツ本国とは違うオーストリア固有の方言を恥と思わずに愛しましょう」といったことが書いてあります。ただし、威張れるほどのモノとまでは言ってませんが。

ちなみにドイツ語の基準として有名なDudenの辞書の1つには「Wie sagt man in Oesterreich? (オーストリアではどう言うか?)」という本があるのですが、その副題には「Deutscher als Deutschland(ドイツよりもドイツ的)」というけっこう激しいことが書いてあります。その背景には、ドイツ語で書かれた文学作品として最古級にあたる「ニーベルンゲンの歌」やヴァルター・フォン・デア・フォーゲルヴァイデ(チロル出身)などの詩がバーベンベルク朝時代のオーストリアのドイツ語をベースとしていたというプライドと見栄があるんでしょうね。ちょうど日本でいうなら、紫式部や清少納言の流れを汲んだ京都弁がウィーン弁にあたり、明治時代以降の東京弁が今の標準ドイツ語にあたると置き換えれば、その事情はよくわかると思います。    

なお、ウィーン弁も標準ドイツ語も基本的な文法はいっしょなので、この本の内容は発音の訛り方と語尾変化に説明が集中しています。そんなわけで、この本を使ってウィーン弁を勉強するには、まず標準ドイツ語を覚える必要があります。が、このサイトにいらっしゃる方にはドイツ語の話せる方がけっこう多いようなので、この本を掲載しておく価値はありそうですね。    

なお、標準ドイツ語とウィーン弁(オーストリア弁全体やバイエルン弁も含む)で文法的に異なる点としては、3つだけ覚えておくとよいことがあります。その1つは、ウィーン弁では「2格(英語でいうと所有格に近いです)」でモノをあまり表現しないということ。たとえば標準ドイツ語で Der Hut des Vaters(お父さんの帽子)というところをウィーン弁では in Vatta sein Huad(お父さんにとって彼の帽子)というヘンな言い回しをします。2つめは、現在完了形のとき標準ドイツ語では sein + 過去分詞とするところが、ウィーン弁では haben + 過去分詞になったりするということです。そして3つめは、ウィーン弁の場合(特に会話のとき)、過去形も現在完了もすべて現在完了形で片付けていいらしいということです。これはラクでいいですね。    



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