オーストリア散策シシー > アラカルトNo.13
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史上最大のラブレター




カイザーヴィラ(バートイシュル)

バートイシュルといえば、オーストリア皇帝になりたてのフランツ・ヨーゼフがシシーにひと目惚れしてしまった場所として知られていますね。そして、この町にはシシーとフランツ・ヨーゼフの夏の別荘のひとつだったカイザーヴィラ(直訳すれば「皇帝荘」)が今でも残っています。

この別荘は元々オーストリア帝国の宰相メッテルニヒが夏の滞在用に所有していたものでした。で、シシーとフランツ・ヨーゼフの婚約が決まったとき、フランツ・ヨーゼフの母親であるゾフィー大公妃がこれを買い求めて2人に贈っています。シシーとゾフィーは犬猿の仲だったと言われるだけに、これはちょっと意外な気もしますね。

ところで、ゾフィーが買い求めたときのカイザーヴィラは上の写真よりもずっと小さな館でした。元からあったのは真ん中の部分(当初の部屋数は14室)だけであり、両側の部分は購入後に増築で付け加えられたものです。そして、この増築には、カイザーヴィラを皇室の離宮の名に恥じない規模と構えにしようということのほかに、もっと面白い意味があったんですよ。

下の図は、カイザーヴィラを真上から見た形です。赤い部分が元々の館で、青い部分はのちに増築された部分なんですが、これを見て何かピンときませんか?



それでは、上の図を左に90度回転させてみましょう。すると、あらまあ!下の図のとおりカイザーヴィラの形はシシーの名前であるエリザベートの頭文字の「E」になっています。そう、これは実を言うとフランツ・ヨーゼフからシシーに向けられた史上最大のラブレターでもあったのです。



しかしこれ、レターと言っても「手紙」じゃなく「文字」で済んでよかったですね。もしフランツ・ヨーゼフがこんな巨大な文字で文章まで綴っていたら、オーストリア帝国の国家財政は完全に崩壊していたことでしょう。危うくオーストリア史にトホホの歴史がもう1ページ追加されるところでした。

◆参考文献:
エリザベート 栄光と悲劇 - イシュルでの婚約
M.シェーファー著、 大津留厚監訳、 永島とも子訳、 刀水書房
Official kaiservilla Homepage > The imperial villa

http://www.kaiservilla.at/content/view/16/43/lang,en/

◆画像元:
Via Imperialis - Mitglieder > 13 Kaiservilla, Bad Ischl

http://www.viaimperialis.at/members_german.php





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