今回は一見オーストリアに関係なさそうな「ジノリ」の白磁器を2点です。もちろんホントは関係ありますけど。
まず上の段にある皿のデザインはイタリア語で「大公女」を意味する「グランデューカ」といいます。これはジノリ侯爵が1780年にトスカーナ大公女に献上したものを当時の製法で再現した一品です。そして、その大公女とはハプスブルク家のマリア・テレジアでした。実を言うとマリア・テレジアがロートリンゲン公フランツ・シュテファンと結婚するとき、ロートリンゲン(仏名はロレーヌ)と国境を接するフランスはこれに大きく反対。そこでフランツ・シュテファンはメディチ家の断絶で領主が空位になったトスカーナ公国に領地替えとなり、その妃のマリア・テレジアはトスカーナ大公女になったのです。ちなみに、フランツ・シュテファンによるトスカーナ公国の運営はとても良好だったそうですよ。
一方、下の段にあるのは「森の果実シリーズ」のコーヒーカップです。そのオリジナルは1880年ごろにサヴォイア王家のウンベルト1世の注文でデザインされました。そしてサヴォイア家というのはトスカーナ公国からハプスブルク=ロートリンゲン家出身の領主を完全に退場させた家門です。つまり、これまたオーストリアには歴史的に縁がある一品だったのです。
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