オーストリア散策伝統の宿 > No.10
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Schloss Roethelstein (アドモント)
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オーストリアには古城ホテルというのがいくつもあります。しかし、若い学生やOLの方の旅行となると、1泊数万円もする高価な古城ホテルというのはそう気安く泊まれる場所じゃありませんね。そんなわけで、今回はオーストリアで最もエコノミー価格で滞在できる古城ホテルをご紹介しましょう。それは、この国の東南部・シュタイアーマルク州のアドモントという町の郊外にあるレーテルシュタイン城(上の写真)です。実を言うとこのお城、ホテルじゃなくてユースホステルとして開業していたんですよ。

レーテルシュタイン城(日本語でいうと「馬石城」※注1)になります)ができたのは、1665年のことでした。元々はアドモント修道院にいたベネディクト派の修道僧の憩いの場という役目のほかに、修道院にあったお宝の絵画を展示するギャラリーも兼ねて建てられた城です。

ちなみにアドモント修道院というのは、ザルツブルク大司教のゲープハルトによって1074年に創設されたというオーストリアでも指折りの由緒ある修道院で、特に豊富な書籍を誇る図書館が有名です。その図書館は1773年に完成し、15万冊の印刷本のほか、印刷技術初期の本も900冊あり、さらにもっと古い手書きの時代の本も1,600冊あるといいます。これ、一般にも公開されていますので、レーテルシュタイン城にご宿泊の際には、ぜひ訪れてみるといいでしょう。というより、アドモントの町はとても小さいので、ほかに行くところはそんなにないでしょうけど。

さて、話しを戻しまして、レーテルシュタイン城は創設から約300年の時を経て、ベネディクト修道会からシュタイアーマルク州政府の手に渡りました。そしてシュタイアーマルク州は1976年にこの城の一部をユースホステルとし、一般の人たちに開放。こうして誰もが気軽に歴史ある城にちょっと住んでみるという体験ができるようになりました。

もっとも、最近は旅行者がちょっと贅沢になってきたせいか、はたまた見知らぬ人たちが大部屋で一緒になるユースホステルが敬遠されてきたせいか、レーテルシュタイン城も2005年から内部の改装作業を開始、2006年6月30日に部屋数39室の「若者および家族用旅籠」として再オープンしています。ただし、宿泊料金※注2)のほうは手頃なペンションと大差ありませんので、誰もが気軽に泊まれるところは変わりません。もっとも、お安いこととお粗末ということは別モノです。一応300年以上の歴史をもつお城なのですから、泊まるときはそれなりにお行儀よくしましょうね。

そうそう、私が初めてこの城を発見した本には、「世界一美しいユースホステル」という表現がなされていました。しかし、先日ネットで見つけたサイトでは、「ヨーロッパ一美しいユースホステル」と少し控えめな表現に変わっています。世界のどこかにもっとすごい歴史や文化の遺産をユースにしたところでも現れたんでしょうか?

※注1)どこで調べたか記憶にないのですが、Roethelはオーストリア弁で馬を意味するRoessl(レッスル)の1バージョンとのこと。語尾に「l」がついてますから、より正確にいうなら「馬っコ」ですね。一方、Steinの意味は石ころから岩石質の山までかなり広いのですが、ここでは山のほうを意味しています。

※注2)2006年6月11日時点の情報によると、バス・トイレ付きのツインで1人あたり素泊まり33〜35ユーロ、食事半分付き41〜43ユーロ、フルの食事付き48〜50ユーロです。詳しくは下記のURL(ドイツ語ですが)に出ています。
http://www.culturelounge.at/roethelstein.php



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