オーストリア散策 > エピソード > No.135 |
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オーストリアの川といえば、中欧で最長を誇る「ドナウ川」が有名ですね。この川、ウィーンのあたりで見るとホントは茶色なのに、「青きドナウ」という粉飾がまかり通っていることでもよく知られています。しかもこれ、もっと上流のザルツアッハ川やイン川まで遡っても緑色になるばかりで、ちっとも青くはなりません。支流沿いに住むチロルの人々は地元の民謡で「緑のイン川」と正直に歌っているんですけど・・・。
ちなみに、上記の地図を見ると、クレタ、シチリア、コルシカ、サルディニアといった地中海の島々の地形だけは、今の地図との誤差が少ないですね。ギリシア本土に近いうえ、比較的コンパクトなため船で容易に一周して形を確認できるところがよかったのでしょう。そこで、シチリアの東の端(メッシーナ)から西の端(トランパーニ)までの距離(約200km)を基準にしてヘカタイオスの世界地図の川の長さを計算し、これを今の地理の教材に載っている長さと比較したら、下表のような結果が得られました。 |
番号 | 河川名 | ヘカタイオスの地図での長さ | 今の地図での長さ | ウソツキ率 |
[1] | ドナウ川 | 1,700km | 2,860km | ▲41% |
[2] | ナイル川 | 1,350km | 6,690km | ▲80% |
[3] | ポー川 | 350km | 680km | ▲49% |
[4] | ドン川 | 550km | 1,970km | ▲72% |
[5] | インダス川 | 700km | 2,900km | ▲76% |
[6] | ユーフラテス川 | 1,100km | 2,800km | ▲61% |
以上の数字を見ると、どうやらドナウ川は不当に過大評価されていたというわけではなく、むしろ他の川が必要以上に過小評価されていたというのが真実のようですね。また、ギリシア本土から地理的にも心理的にも離れるほど川の長さのディスカウント率が大きくなってゆく傾向にあるところは、ちょっと面白いと思います。それから、ナイル川が南アフリカの海に源流をもち、タンザニアやウガンダにある2,000m級の山地を逆流して、そこからカイロをめがけて下ってくるという奇想天外ぶりには、古代人の大らかさも感じられますね。まあ、ナイル川が塩水なしで山まで登り、インダス川が信濃川の2倍しかないのなら、ドナウ川が世界最長と言われても仕方ないでしょう。
◆参考資料: |
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