オーストリア散策エピソードNo.001-050 > No.045
前に戻る


オーストリアの古い調べ - その2
line


今日はザルツブルクより東の地域の古い音楽をご紹介しましょう。ここもまた、ゆったりくつろげる感じの局がたくさんありますよ。

ダッハシュタインダッハシュタイン

まず最初は「高きダッハシュタインの山から」という、オーストリアでは有名な歌。ダッハシュタインというのは湖沼地帯であるザルツカンマーグート地方の山地の名前です。ダッハ(Dach)は日本語にすると「屋根」、シュタイン(Stein)は「石」です。左の写真の山は雪に隠れていますが、実はほとんど石の塊なんですよ。この歌の歌詞は「ダッハシュタインにから見る風景は美しい!思わずヨーデルを口ずさんでしまいそう」という他愛のないものです。生活を歌った民謡というよりも、観光向けの1曲という感じですが、ちょっと優しい響きがいいですね。


次は「ちょっと南に下がって、イタリアと国境をなすケルンテンの「故郷ケルンテン」です。州歌らしいですよ。1番から3番の歌詞はこの地方の自然の美しさを歌っていて、1817年に作られました。そして、1928年に4番の歌詞が付け加えられました。その4番の歌詞には第1次世界大戦で負けたあとの苦しみと新たな郷土愛への気持ちが歌われています。メロディーに悲壮感がないのは、1817年作の歌詞に合わせたせいですね。なお、オーストリアではよくチロル人のことを変人と言いますが、ケルンテン人には頑固者が多いと思われているようです。

さて、今度はオーバーエスタライヒ州の「」という歌です。「山と谷の間に滝がある。そこに私の楽しい山小屋がある。」と、ヨーデルを交えて歌っています。このあたりはまだ東アルプスの一部で、高い山もけっこうありますよ。なお、この地方は旧チロル伯爵領や旧ケルンテン公国と違ってオーストリア以外の国としての歴史が希薄ないせいか、州全体に対する愛着を示す歌というのはあまり聞いたことがありません。たぶん都市や町村単位ならあるのでしょうけど。

お次はシュタイアーマルク地方の歌です。ここは第1次世界大戦までシュタイアーマルク公国という名がついていて、住民もそのことを誇りに思ってきました。また、ここの人々はケルンテンに負けないほど頑固とか。この地方で最も有名な民謡といえば、かの名君を歌った「ヨハン大公のヨーデル」ですね。このお殿様については、「町娘と結婚した大公殿下2人」と「ルドルフ皇太子の幽霊退治」でも紹介してあります。また、ここも山深い地方で、その生活を歌った曲もたくさんあるようですよ。そのひとつは「シュタイアーマルクの馬」という歌です。どことなくウィーンの音楽の優雅さもありますね。本当に頑固者の里なのでしょうか?ちなみに、よくウィーンの音楽にでてくるアコーディオンみたいな楽器は、ドイツ語でシュタイリシェ・ハーモニカと(Steirische Harmonika=シュタイアーマルク風ハーモニカ)というんですよ。

シュテファン教会
ウィーンの象徴、シュテファン教会

さあ、いよいよウィーンです。ここでまず古い歌といえば「愛しのアウグスティン」ですね。ペストの災難の時代も明るく生き延びた伝説のバクパイプ吹きの男をテーマに、たとえつらいことがあってもウィーンは不死身と、どこか悲しげながらも陽気に奏でています。これに続きましてはウィーン名物シュランメル音楽から「歌の町」という曲。優雅でノスタルジックで、ホイリゲ(ワイン酒場)にピッタリです。このジャンルを作ったシュランメルは、実はボヘミアから来た人でした。ウィーンの文化というのは、しばしばウィーン以外の手を借りてできていたんですよ。生粋のウィーン人が作った曲では、「夢の町ウィーン」があります。この歌はシュフテファン教会のことをシュテッフェル(シュテちゃん)と呼んでますね。


そういえば、自分の町を故郷というよりも我が家として歌うことが多いのも、ウィーンの特徴という気がします。

ついでながら、その昔ハプスブルク家の傘下でオーストリアと運命共同体にあったハンガリーとボヘミアの曲も少しご紹介しておきましょうね。特にハンガリーの曲はなんだかエキゾチックですよ。曲名はわからないのですが、古いハンガリーの「舞踊曲1」、「舞踊曲2」、「舞踊曲3」をどうぞ。一方、ボヘミアの曲では「古いボヘミアの歌」と「クリスマスキャロル」を見つけました。どちらもドイツ系の住民の曲みたいですね。スラブ系の人たちはもうちょっと土の香りがしながら、ハンガリーみたいに気まぐれにアップテンポにあったりする歌も歌っています。今度そのmidiも見つけてきましょう。

以上、今日はオーストリアの古い歌の後編をお届けしました。それではみなさん、ごきげんよう!

前回と今回のオーストリアの古音楽のmidiファイルはドイツの「Leader der Lieder」というサイトからいただきました。他にもいろいろな国の歌が合計2万ほどあります。興味のある方は一度ご覧下さい。


line

前に戻る