オーストリア散策エピソードNo.001-050 > No.003
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いなかったけどいたドラゴン
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ゲラーゲンフルトのドラゴン像
クラーゲンフルトのドラゴン像


オーストリア南部にあるケルンテン州の州都・クラーゲンフルト。ここはドラゴン伝説の町として有名なところです。14世紀のこと、この町の北で75cmほどになる変わった動物の頭の骨が発見されました。人々は「これでドラゴンの存在が証明されたぞ」と大喜びし、その骨を市庁舎の前に展示したそうです。また16世紀になると、ある芸術家がこの骨をモデルにして、ドラゴンの像まで作りました。のどかな話しですね。

ところが、科学が大いに進歩した19世紀になると、このドラゴン伝説に水をさす御仁が現れます。それはグラーツ生まれの学者・フランツ ウンガー(1800-1870)でした。ウンガーはおごそかに「これは旧石器時代にどこでも見られたサイの一種の頭骸骨ですなあ」と分析結果を披露。これがクラーゲンフルトの人々から大いにヒンシュクを買ったのは、いうまでもありません。

ドラゴンがいないことぐらい、人々はうすうす感付いていました。しかし、ドラゴンはクラーゲンフルトの町を象徴する動物です。人々はその伝説を何百年もの間、ずっと誇りにしてきました。だから、ドラゴンのいないクラーゲンフルトなんて、考えられませんでした。ドラゴンが存在しなかったことれは「事実」でしょう。しかし、「真実」は違います。ドラゴンは人々の心の中に、古来から存在し続けていたのだから。


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