この本に目次はありませんが、掲載している絵葉書をページ順に紹介すると以下のとおりとなります。 ●フランツ・ヨーゼフ皇帝の絵葉書 --- p.9 ●帝国主要都市の絵葉書 ・・・ p.13-p.19 ●戦場の絵葉書 ・・・ p.20-p.21 ●ブルゲンラントの絵葉書 ・・・ p.22 ●下オーストリアとウィーンの絵葉書 ・・・ p.25-p.48 ●シュタイアーマルク公国の絵葉書 ・・・ p.49-p.56 ●ケルンテン公国の絵葉書 ・・・ p.57-p.64 ●上オーストリアの絵葉書 ・・・ p.65-p.72 ●ザルツブルク公国の絵葉書 ・・・ p.73-p.80 ●チロル伯領の絵葉書 ・・・ p.81-p.88 ●南チロルの絵葉書 ・・・ p.89-p.91 ●フォアアールベルクの絵葉書 ・・・ p.92-p.99
この本のタイトルをあまり不自然じゃない日本語に訳せば、「帝政時代の絵葉書でこんにちは」となります。で、その名のとおりこれはフランツ・ヨーゼフが皇帝だった19世紀後半から20世紀初めまでのオーストリア=ハンガリー帝国各地の絵葉書を集めた1冊です。掲載されている絵葉書(宛名や通信文の面を除く)は全部で135枚です。また、部分的には英仏伊語の説明もついています。 この本の楽しみ方はたくさんあります。最も手軽なお楽しみは100年前のハプスブルク帝国各地の風景を今の風景と比べることですね。基本的に帝政時代の街並みはほとんどそのままなのですが、よく見るとこっそり変わっている部分もチラホラ。かつて流行した「ウィーリーを探せ」のノリでどこが変わったかを探すのも面白いと思います。 またドイツ語の話せる方には、帝政時代の手紙の文も興味深いかと思います。それぞれの文面をよく見ると今のスペルと微妙に違う綴りの単語も出てきますし、宛名の表現も今に比べたらずいぶんと丁寧ですよ。また、この本の中には、カリグラフィーを学んだと思しき人の書いたハガキが多数(どう見ても楔形文字というヘタクソなのも少しありますが)あります。今のオーストリア人で手紙にこんなきれいな文字を書く人はそういません。こういうところにも時代の流れが現れますね。 それと、当時の切手は額面がいくらどうがどれもこれも皇帝フランツ・ヨーゼフの肖像画のばかりで、これはなかなか笑えます。10枚中9枚ぐらいがそうですから。で、たまに違うのがあったかと思うと、フランツ・ヨーゼフの顔の向きが反対になっているだけということも。個人的にはこんなむさ苦しい切手をたくさん発行するよりも、麗しいシシーの切手を量産したほうがずっとよかったのではないかと思いますが。