オーストリア散策書棚 > No.19
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18世紀ウィーンの演劇
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18世紀ウィーンの民衆劇

出版元 法政大学出版局 初版 1988年11月
著者 原 研二 体裁 B5版
ページ数 約530ページ


目次

第1章 ハンスヴルスト 都に居を定む --- p.1
ウィーン市立ケルンテン劇場/広場・路上の騒擾/重層する桟敷/巡遊の民/傀儡師とヒルファディング一家/ザルツブルク生まれ/道化の戦場ウィーン/ピッケルヘーリング対ハレルキン/自然児ハンス

1章から2章へのインテルメッツォ --- p143
オペラが見たい!/魔法劇「ルンツヴァンスカード」/プレハウザー=ハンスヴルスト/宮廷、バロックから後退す

第2章工人のユートピア --- p171
機械劇/1752年 即興劇禁止令/増殖する分身 プルチネッラ/死せるコロンビーネ 機械仕掛けの神として再び/ニコリーニの童子一座/童子・民衆・自然/遠近法マシーン1 − 人間/遠近法マシーン - 非人間

第3章 ローカル化の時代 --- p.277
ウィーンは踊る/ハーフナーの時代/ウィーン演劇論争/オドアルド役者ヴァイスケルン/ウィーン子の誕生/アンチ結婚1 − プラハの姉とは?/アンチ結婚2 - 恋愛ではなく/検閲の内化

第4章 もっと分身を --- p.385
ケルンテン門劇場の没落/土着のヒーロー・カスペルル/レオポルト区劇場とアウフ・デア・ヴィーン劇場/幻のパッパゲーノ1 - 不釣合いなペア/幻のパパゲーノ2 - プルチネッラ

1918年以降のオーストリア文学 --- p247

ひとこと


この本は、テレビのない18世紀のウィーンの人々が、ドラマや映画の代わりにこんな劇を見て楽しんでましたよ、ということを書いています。

ここに出てくる演劇は、日本でいうなら吉本新喜劇とか藤山寛美の舞台、あるいは水戸黄門の番組みたいなものばかりです。例えば第1章に出てくるハンスヴルストは、水戸黄門に出てくるうっかり八兵衛のような人物。いつも誰かの従者という役で登場して、主人のライバルの従者に対抗しながらアドリブで面白いことを言い、ついでにどこかでドジを踏みます。また、第4章に出てくるカスペルルもハンスヴルストに似た道化で、たぶんボヘミアのカシュパーレクやドイツのカスパーと同一の役だと思います。そういえば、日本でネコジャラ市の11人が放映されていた頃、ドイツでは子供向けにカスパーの人形劇が放映されていましたよ。一方、カスパーと同じく第4章に出てくるプルチネッラは、イタリアの道化役のプチネッラと同一なんじゃないかと思います。しかし、ドイツでもイタリアでもオーストリアでも、民衆の娯楽や趣向の本質は大して日本と変わらないんですね。

なお、この本の各章には、当時のウィーン民衆劇の台本が2、3点ずつ掲載してあります。そのタイトルは以下のとおりです。

■第1章: 愉快な旅行記、ゴルディアーヌス
■第2章: なし
■第3章: よみがえったベルナルドン、アルルカンの誕生
■第4章: プラハの姉
■第5章: ファゴット吹きカスパー、ファウスト博士の最後の日



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