オーストリア散策書棚 > No.17
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オーストリア文学史
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オーストリア文学史

出版元 南江堂 初版 1983年8月
著者 エルンスト・ヨーゼフ・ゲルリヒ 体裁 B5版
訳者 清水健次、土屋明人 ページ数 約300ページ


目次

バーベンベルク時代 --- p.5
発端 - 宗教的詩文学/オーストリアの英雄伝説/韻文長編・短編小説/ミンネサング(恋愛詩)

ルネッサンスとバロック --- p.45
新しい時代/オーストリアの初期人文主義/市民階級の詩文学と旧オーストリア演劇/バロックへの過渡期/バロック時代の叙事詩、抒情詩、散文/オーストリア=イタリア詩文学

グリルパルツァー時代--- p87
大きな転換/文章語の進出/ブルク劇場とワイマール古典主義/ケ啓蒙主義とドナウ川流域国/旧ウィーン民衆舞台/愛国文学/古典主義 - ビーダーマイヤー/グリルパルツァー/ライムント/シティフター/異国趣味文学/方言文学

新しい潮流 --- p.179
自由主義と社会主義/ヨハン・ネストロイ/写実主義/ウィーンのオペレッタ

オーストリアのモダニズム --- p.203
ウィーンの詩人グループ/新しい抒情詩/オーストリアのルネサンス/郷土文学/労働者文学/現代と展望

1918年以降のオーストリア文学 --- p247

ひとこと


この本、正直言って面白いというわけではありません。ただ、私の知る限り、これは日本語でオーストリア文学史が読める唯一の本です。その意味で、この本には大きな価値があると言えるでしょう。

著者のエルンスト・ヨーゼフ・ゲルリヒ博士がこの本を書いたのは1946年12月でした。そして、この日本語版を発行した南江堂は、京都にある医学専門書の出版社です。この出版社の方、ちょっと気まぐれでも起こしたんでしょうか?

さてその内容ですが、バーベンベルク時代から第2次世界大戦までのオーストリア文学の紹介が淡々と書かれ、戦後のことについては訳者のあとがきで少し触れてあります。ただ、ここでいうオーストリア文学とは、今のオーストリア共和国のエリアで書かれた作品を指すようで、ハプスブルク時代に活躍したチェコのカフカ、ハシェクなどについては、言及されていません。たぶん、戦後間もなくの時代なので、著者にも遠慮があったのでしょう。しかし、いつの日にか、せめて学術の面は何のわだかまりなく、スラブとゲルマンの人たちが作り上げてきた旧オーストリア文化圏の文学史の本が出ることを望みます。

P.S. その後、日本語の初版を刊行した南江堂は「オーストリア文学史」は絶版となったもようです。で、現在は芦書房というところが下の写真のように表紙をリニューアルして「オーストリア文学史」を発行しています。しかも、かつては1冊4,200円(消費税抜き)だったこの本を芦書房は1冊2,800円(消費税抜き)に値下げ。良心的な出版社ですね。


2005年現在の表紙

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